業界的にも珍しい,新築のシェアハウス の計画である.
2013年8月号。「新建築」より転載。
さまざまな居場所が共存するシェアハウス
個室と共用部の図式的対比を超えて
これは,業界的にも珍しい,新築のシェアハウス
の計画である.近年急速に増加しつつあるシェア
ハウスは,水回りやリビングを住人たちで共有す
る,いわば大きな家のようなスタイルの住まいで
ある。異なるのは,住まい手が家族でない他人で
あることだ。そこには,運営的にも空間的にも,
他人間士が自然に場を共用し住み続けるための,
独特の技術が必要となる。空間側にあいては,パ
ブリック・プライベートの間係性という,住まいに
おいてあ決まりのテーマに,新たな試みが必要と
なる.
こうしたことに間する建築的な提案は,これまで
も集合住宅や寮などにあいて試みられてきた.し
がし集合住宅はシェアハウスほど共用する揚が多
くなく,寮は不動産ビジネスとして成立させる必
要がないため,現在のシェアハウスのような細が
な設計は必要とされない.近年,寮のリノベーショ
ンを行ってシェアハウスとして貸し出すケースが増
えているが,それはシェアハウスの方が,細やが
な運営と設計によって住まい手を引きつけている
何よりの証拠である.
![シェアハウスLT城西 D-FLAT04](http://d-flat-nagoya.com/wp/wp-content/uploads/2016/03/d-flat04-08-630x420.jpg)
シェアハウスLT城西 D-FLAT04
今回の設計は,新築であることを積極的に捉え,
これまでリノペーションによって試みられてきた共
用部の空間設計を,建築全体の構成のあり方にま
でフィードバックしたものである。共用部と個室の
配置を同時に検討し,個室の立体的なレイアウト
によって,残余としての共用部に異なる居心地の
居場所を複数つくり上げた.吹き抜けたエントラ
ンスホールや,ダイニングテーブル付近は,多人
数で集まるのに適している一方で,共用部の隅に
あるリビングや窓際のスペースは,ひとりでも思
い思いに時間を過ごすこともできるスペースであ
る.キッチンカウンターは,比較的少人数のコミユ
ニケーションに適している.2階のラグスペースは
最もリラックスした空間だ.こうした空間づくりに
よって,住人は,より気軽に,個室の延長として
共用部を利用できるようになる.また平面図では
一見同じに見える個室の性格は,リビングがらの
距離や経路といった共用部との間係性や,天丼の
高さによって,ひとつとして同じものがない状況
をつくり出した。
結果としてこの建築にあいては,個室と共用部に
はセキュリティ上の境界があるものの,パブリック・
プライベートの図式的な対比を超え,さまざまな
スペースが連続的に繋がる居住空間が成立した。
シェアハウスという一見特殊な住まい方から生ま
れたこの空間が,個と共を自然に調和させること
のできる,新しい建築の可能性を間くことを願っ
ている。 (成瀬友梨十猪熊純)
![名古屋シェアハウスLT城西 D-FLAT04](http://d-flat-nagoya.com/wp/wp-content/uploads/2016/03/d-flat04-06-630x420.jpg)
シェアハウス。名古屋D-FLAT。LT城西 D-FLAT04
不動産的経済性と空間的豊かさの両立
本建築は全個室を13㎡ずつとしながら,延
床面積を人数で割ると,ひとり当たりの専有
面積が約23㎡となり,周辺の新築のワン
ルームマンションと同等かそれ以上の面積効
率である。廊下をつくらずすべての共用部を
生きた空間とすることで,無駄のない面積配
分を実現した。コストメリットを出すために,
平面的にほ極力単純な構成,同面積の個室
などといった制約を設け,3640㎜のグリッ
ドだけで設計している.断面的にほ,基準法
上で木造2階建てを満たしながら,2階のフ
ロアレベルに1,800mmの差を持たせること
で,建物内部が立体的に繋がり,豊かで広
がりのある共用部を生み出している。また,
個室の入口を少し凹ませることで共用部との
距離感を操作し,ほどよいプライバシーを保
つよう心掛けた。余分な空間を極力排除しな
がらも,他人同士の距離感に最大限に気遣っ
た設計になっている。
(金田未来/成瀬・猪熊建築設計事務所)
2013年8月号。「新建築」より転載。
株式会社 新建築
![シェアハウスLT城西 D-FLAT04](http://d-flat-nagoya.com/wp/wp-content/uploads/2016/03/d-flat04-04-630x420.jpg)
シェアハウスLT城西 D-FLAT04