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業界的にも珍しい,新築のシェアハウス の計画である.

2018-03-03

2013年8月号。「新建築」より転載。

さまざまな居場所が共存するシェアハウス

個室と共用部の図式的対比を超えて

これは,業界的にも珍しい,新築のシェアハウス
の計画である.近年急速に増加しつつあるシェア
ハウスは,水回りやリビングを住人たちで共有す
る,いわば大きな家のようなスタイルの住まいで
ある。異なるのは,住まい手が家族でない他人で
あることだ。そこには,運営的にも空間的にも,
他人間士が自然に場を共用し住み続けるための,
独特の技術が必要となる。空間側にあいては,パ
ブリック・プライベートの間係性という,住まいに
おいてあ決まりのテーマに,新たな試みが必要と
なる.
こうしたことに間する建築的な提案は,これまで
も集合住宅や寮などにあいて試みられてきた.し
がし集合住宅はシェアハウスほど共用する揚が多
くなく,寮は不動産ビジネスとして成立させる必
要がないため,現在のシェアハウスのような細が
な設計は必要とされない.近年,寮のリノベーショ
ンを行ってシェアハウスとして貸し出すケースが増
えているが,それはシェアハウスの方が,細やが
な運営と設計によって住まい手を引きつけている
何よりの証拠である.

シェアハウスLT城西 D-FLAT04

シェアハウスLT城西 D-FLAT04

今回の設計は,新築であることを積極的に捉え,
これまでリノペーションによって試みられてきた共
用部の空間設計を,建築全体の構成のあり方にま
でフィードバックしたものである。共用部と個室の
配置を同時に検討し,個室の立体的なレイアウト
によって,残余としての共用部に異なる居心地の
居場所を複数つくり上げた.吹き抜けたエントラ
ンスホールや,ダイニングテーブル付近は,多人
数で集まるのに適している一方で,共用部の隅に
あるリビングや窓際のスペースは,ひとりでも思
い思いに時間を過ごすこともできるスペースであ
る.キッチンカウンターは,比較的少人数のコミユ
ニケーションに適している.2階のラグスペースは
最もリラックスした空間だ.こうした空間づくりに
よって,住人は,より気軽に,個室の延長として
共用部を利用できるようになる.また平面図では
一見同じに見える個室の性格は,リビングがらの
距離や経路といった共用部との間係性や,天丼の
高さによって,ひとつとして同じものがない状況
をつくり出した。
結果としてこの建築にあいては,個室と共用部に
はセキュリティ上の境界があるものの,パブリック・
プライベートの図式的な対比を超え,さまざまな
スペースが連続的に繋がる居住空間が成立した。
シェアハウスという一見特殊な住まい方から生ま
れたこの空間が,個と共を自然に調和させること
のできる,新しい建築の可能性を間くことを願っ
ている。         (成瀬友梨十猪熊純)

名古屋シェアハウスLT城西 D-FLAT04

シェアハウス。名古屋D-FLAT。LT城西 D-FLAT04

不動産的経済性と空間的豊かさの両立

本建築は全個室を13㎡ずつとしながら,延
床面積を人数で割ると,ひとり当たりの専有
面積が約23㎡となり,周辺の新築のワン
ルームマンションと同等かそれ以上の面積効
率である。廊下をつくらずすべての共用部を
生きた空間とすることで,無駄のない面積配
分を実現した。コストメリットを出すために,
平面的にほ極力単純な構成,同面積の個室
などといった制約を設け,3640㎜のグリッ
ドだけで設計している.断面的にほ,基準法
上で木造2階建てを満たしながら,2階のフ
ロアレベルに1,800mmの差を持たせること
で,建物内部が立体的に繋がり,豊かで広
がりのある共用部を生み出している。また,
個室の入口を少し凹ませることで共用部との
距離感を操作し,ほどよいプライバシーを保
つよう心掛けた。余分な空間を極力排除しな
がらも,他人同士の距離感に最大限に気遣っ
た設計になっている。
(金田未来/成瀬・猪熊建築設計事務所)

2013年8月号。「新建築」より転載。
株式会社 新建築

シェアハウスLT城西 D-FLAT04

シェアハウスLT城西 D-FLAT04

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